|
詩心・歌心のメッセージパート1/3月23日(日)長野県県民文化会館小ホールにて。 |
数年前「オペラで町を元気にしたい」といきいきと語り、カルチャー教室講師やオペラの出前講演を精力的に行ってきた小松俊彦さん。近々リサイタルを開くと聞き、お話をうかがいました。
「今までイベントなどで忙しく活動してきましたが、自分の声楽家としての原点に立ち戻り、見直してみようと思いリサイタルを開くことにしました。」大きな体躯、柔らかなバリトンの声で小松さんは語ります。
「長い間、東京で舞台を中心にした活動の後、年老いた両親の介護の為、15年ほど前に信州松代に戻ってきました。歌に介護にと走り回っているうちに、両親が亡くなり、はつと気がついたら、歌を楽しみ生涯の友としてきたつもりが、自分が何をやるべきかよくわからなくなってしまったのです。」
聞けば、一昨年の秋、軽い脳梗塞に倒れたそうです。
「朝起きたら歯ブラシが握れなかったんです。でもその日は川中島で本番があったので、なんとかそれをこなして、病院に駆け込みました。幸い状態は軽く、10日ほどの入院ですみました。」
しかし、小松さんは介護の役目を終え、病後の体が回復期に向かう中、あんなに楽しかったオペラを歌うエネルギーが枯れてしまっている自分を知ったそうです。気分が落ち込む日々、活動を支えてくれたパートナーとのコミュニケーションもうまく行かなくなり、何もかもがダメになっていくような気持ちが襲ってきたそうです。
「でも、これじゃあいけない。何の為に長野に戻ってきたのか。私の歌声で皆がハッピーになり、町の一角が少しでも楽しくなったらいいじゃないか…。60代を歩み始めた最近、そんなシンプルな歌への希望を思い出しました。残りの人生を心安らかに、問いてくれる人、一緒に歌ってくれる人を友として。もう一度高らかに歌おう。」
タキシードに身を包み、背筋をしゃんと伸ばした小松さん。少し高めの朗々たるバリトンがイタリア古典歌のアマリッリや日本の唱歌に乗って響きます。歌声が響く街角は楽しく明るいまちの印です。長野市の一角に小松さんの歌声が戻る日も近いかもしれません。 (取材・編集室)
|